2013年12月31日火曜日

市川崑「東京オリンピック」


昨日BSプレミアムで放映していたのを録画して今日観た。
何度かこの映画は観ていて、だいたいのストーリーも把握しているが、今回はこのあいだ読んだ野地秩嘉『TOKYOオリンピック物語』と照らし合わせたい部分もあって観なおしてみたのだ。
陸上男子100m決勝前にハイスピードカメラが故障したこと、カメラの台数に制限があったマラソンなど、知ってしまったばかりに観ているだけでスリリングだ。
織田フィールドの向うに広がる昭和39年当時の富ヶ谷や渋谷の住宅地、甲州街道沿いの商店街などなつかしい風景にも目が奪われる。
開会式の聖火台の下で島崎国男がついに捕えられたのだなと思うのはちょっと小説の読みすぎか。

2013年12月23日月曜日

降旗康男「駅 STATION」

年末年始になると映画でも観ようかという気分になる。
正月になるとおもしろそうなタイトルが次から次へと封切られる、そんな思い出が頭をよぎるせいだろうか。
観たかもしれないけど、観てないかもしれない映画。それがこの「駅STATION」だ。
BSプレミアムで放送があるというので観てみた。
観てなかった。
高倉健の刑事ものは珍しいと思って観ていたが、あとで調べると案外そうでもなかったようだ。
いずれにしても切ない男を演じさせたらやっぱりこの人だよなと思えてしまうのだ。

2013年11月25日月曜日

国本雅弘「おにいちゃんのハナビ」

ヤッさんは電通映画社のCMディレクターだった。
BSプレミアムで「おにいちゃんのハナビ」を観た。2009年に亡くなったヤッさんの最後の作品ではないろうか。
高良健吾が引きこもりの青年役としていい演技をしている。華役の谷村美月の友人のひとりが剛力彩芽だ。脇もいい。大杉蓮は地味な役ほど味が出るし、塩見省三ははまり役だ。森康子も僕にとってはとてもリアルな老人役である。
物語の構成要素として、白血病、花火、引きこもりとくれば大方筋書きは読めてしまう。いつ泣かせるのかとこちらも待ちかまえてしまう。
いちばん泣けたのは兄太郎が華に携帯電話を買ってあげたシーンだった。

2013年10月28日月曜日

松本千晶※「ラジオの産声」

ムサビの大学祭を訪れた。
展示物やイベントが多く、半日ではすべてまわりきれない。
ムサシネというシアターを訪ねる。以前は実験的なコマ撮りアニメーションや日常的ライトドラマが多かった、そんな印象があったけど、昨日観たのは秋葉原ガード下でラジオ商を営む高齢の女性にスポットをあてたドキュメントだった。内田ラジオアマチュアショールームは僕も何度ものぞいている。管球式のヴィンテージラジオをはじめとした旧式ラジオとそのパーツを扱う店だ。
母が高齢なせいか妙に共感したのだが、この短編が実によくできている。秋葉原電気街をつくった露天商の歴史的考証などをまじえながらの本格的なドキュメントなのである。脚本が素晴らしい。
近く、秋葉原ガード下の秋葉原ラジオセンターはJR東日本に敷地を返し歴史の彼方に葬り去られる運命にあるという。なんとも哀しい話ではないか。

※ツイッターでこの作品の監督はどなたかと問いかけたところ、武蔵野美術大学映像科の方に教えていただきました。ありがとうございました。

2013年5月20日月曜日

五所平之助「マダムと女房」


天気がよければ神宮に明治対慶應の3回戦を観に行くつもりでいたが、あいにくの雨で中止。ここで明治が負ければ、優勝は直接対決を待たずに法政に決まるという局面だ。13時からBSプレミアムで山田洋次監督が選んだ日本の名作100本の再放送があるというので観てみた。
1931(昭和6)年製作、日本初の本格的トーキーであるという。渡辺篤と田中絹代。
60分に満たない短い喜劇であるが、銀幕からはじめて音が聴こえてくる歴史的な作品として随所に工夫されていて楽しめる。
タイトルクレジットが時代を感じさせない斬新な書体だった。昭和6年とはあるいはそんな時代だったのかもしれない。

2013年5月6日月曜日

成瀬巳喜男「稲妻」


母親が浦辺粂子。父親の異なる一男三女の兄弟の末が高峰秀子。次女の連れ合いが急死し、その保険金目当ての醜い人間模様が描かれている。原作は林芙美子だが、まだ読んでいない。
浦辺粂子は小津安二郎や成瀬作品にたびたび登場するいいキャラクターだが、この映画では準主役といってもいいくらい。独自の味わいをふんだんに発揮している。平凡で愚鈍でごく普通の母親である。
高峰秀子はバスガイドをしている。銀座などなつかしい東京が随所に顔を出す。
すぐ上の姉三浦光子が亡くなった夫の愛人を高峰秀子と訪ねるシーンがある。木橋を渡る。どうやら木場らしい。新田橋といい、今では赤い鉄橋に架けかえられている。
2013年のゴールデンウィークはこうして終わった。

2013年5月5日日曜日

小津安二郎「東京暮色」

父笠智衆と子連れで実家に帰って来た長女原節子、そして大学卒業後自分を見いだせないまま悪い連中と交友を続ける次女有馬稲子が雑司が谷の坂上の家に住んでいた。この坂から望む東京の風景は残されているのだろうか。はるか昔に家を出た母山田五十鈴は五反田の雀荘で働いていた。近くに池上線の高架があり、駅は大崎広小路だ。
ラストで男と北海道に旅立つ母。上野発の夜行急行津軽に乗り込み、長女の見送りを待つ。上野駅の12番線では明治大学の校歌を歌う若者らがいる。
母親の不倫、長女夫婦の不和、次女の堕胎と重いストリーのなかを淡々と生き抜く笠智衆。妙に軽快なB.G.M.はあたかも彼への応援歌であるかのようだった。

2013年2月3日日曜日

錦織良成「RAILWAYS」


昼ごろ、石神井公園ふるさと文化館で開催されている特別展「アトムが飛んだ日」を観る。草創期のテレビアニメーションはシンプルなつくりではあるけれど、当時幼かった僕たちの想像力をかきたてるにはじゅうぶん衝撃的な映像世界だった。
夜BSプレミアムで「RAILWAYS」を放映するというので観終わったらすぐ寝れるよう仕度を整えた。
実にシンプルな映画だ。ビジネスエリートがいくつかのきっかけを経て、電車の運転士に転身する。小さい頃からの夢をかなえる。
ものづくりに強い執着を持ち続ける親友にして同僚、夢をあきらめて運転士になった若者、夢さえも抱けず仕事に生涯をささげようとしている父を蔑む娘。脇のかため方もいたってシンプル。その抜けのいい物語をさらに後押しするようにのどかな故郷の空の下をひた走る2両編成の電車。
いいなあ。
いつかどこか、知らない町の小高い場所に三脚を立てて、通りすぎてゆくローカル線を撮影したいと思った。

2013年1月14日月曜日

成瀬巳喜男「放浪記」


午前中から思わぬ大雪。
先日借りてきた「放浪記」を観る。
作家として大成した林芙美子の家は中井に残る自宅だろうか。
高峰秀子が林芙美子に成りきった演技には当時賛否両論だったと聞く。
僕は名演だと思っている。
林芙美子の生きざまを身体表現でここまで描いた女優に魂を感じるのだ。

2013年1月12日土曜日

野村芳太郎「砂の器」


もういちど観ておきたい名画といえばもうこれしかない。
秀夫が千代吉に会いに駅に走ってくる。
三木謙一もそれを止めることはもうできない。
今西巡査部長が千代吉に青年になった秀夫の写真を見せる。
「そんな人、知らねえ」と嗚咽する千代吉。
これを泣かずにいられるか。

2013年1月3日木曜日

2013年1月2日水曜日

降旗康男「居酒屋兆治」


大晦日BSで見逃した居酒屋兆治を観る。
兆治とさよの話にフォーカスしている映画だった。原作ではほどよい縦糸になっていた印象だった。谷保のもつ焼き屋に集まる人間模様が味わいある横糸でむしろ映画としてはこちらを期待していたんだけどね。舞台が函館というのもちょっと違和感を感じた。
それにしても伊丹十三って役者としても素晴らしい。