2014年7月31日木曜日

相米慎二「魚影の群れ」

吉村昭の原作では青森の暗い海で黙々と鮪を追う漁師が描かれている。
男だけではなく、漁村全体が暗く、無口で表情がない。
事故が起こる。暗く陰惨な事故だ。
もちろんこの映画も重く哀しいのだが、大間の荒海を(ロケ地がどこであるかはわからないが)明るく撮っている。
夏目雅子が、十朱幸代が哀しい人生の真ん中で歌っている。
強く生き抜く女たちが映像に生命力を吹きこんでいる。

2014年7月27日日曜日

成瀬巳喜男「女が階段を上る時」

高峰秀子が銀座のバーのママ。仲代達矢はマネージャーである。
ふたりの間に銀行の支店長森雅之が絡む。どっちつかずの役がよく似合う名優だ。
こんなやりとりがある。
「心の底から商売女に成り下がってしまったのか」
「商売女でわるかったわね」
仲代は当時20代だったにちがいない。
若さがみなぎる役柄ではないけれど、存在感のある役者だったことがよくわかる。
仲代達矢を知ったのはNHKの大河ドラマ「新・平家物語」、平清盛役だった。
小学6年生だった。

2014年7月24日木曜日

小泉尭史「明日への遺言」

元第十三方面軍司令官兼東海軍司令官岡田資中将の横浜軍事法廷での「法戦」の話を大岡昇平『ながい旅』で知った。
映画化もされていた。
監督は「雨あがる」の小泉尭史。岡田資は藤田まことだった。そんなに古い映画ではない。
原作を読んだときの緊迫感がよみがえってきた。
映画だからもしかしたら減刑されるのではないかという気もしないではなかったが、仮にそうだったとしても藤田まことが断っただろう。
岡田資はそういう人物だからである。

2014年7月20日日曜日

小泉尭史「雨あがる」

山本周五郎の『おごそかな渇き』を読む。
おごそかな渇きをおぼえたわけではないのだが、レンタルDVDで「雨あがる」を観る。
地方都市で旨い蕎麦に出会い、帰京後そのまま神田の蕎麦屋でまた蕎麦をたぐるみたいな、上手なたとえじゃないけれど、そんな映画の観方。
最後、主君が三沢伊兵衛を追って、馬を駆る。このシーンが映画にしかないところ。
そのあとどうなるかって?そんなこと、ここには書かないよ。