2014年12月30日火曜日

佐藤純彌「桜田門外ノ変」

佐藤純彌監督というと「植村直己物語」や「敦煌」をはじめとしたスケールの大きな作品を思い浮かべる。
府立一中(現日比谷高)から東大文学部に進んだというから英才でもある。
佐藤純彌が吉村昭の原作にどう挑んたか、興味津々で観た。
事変の現場が前半にあらわれた。
そこにいたるまでの水戸急進派の動きと事変以降の上京、そして逃亡がその後に幾重にもオーバーラップする。あえて難解な構成を選んだ。
吉村昭の『長英逃亡』もそうだが、タイミングがいかにたいせつかがわかる。水戸浪士の動きは遅きに失したともいえるだろう。時期尚早だったとも別の意味では言えるだろう。
時代は刻一刻と大きく動いていたのだ。

2014年12月23日火曜日

木下恵介「喜びも悲しみも幾歳月」

幼少の頃、毎年夏を過ごした南房総白浜町には野島崎灯台があった。さらに館山の方に行くと州の崎灯台があった。
この映画は灯台守夫婦の物語だが、今灯台は完全に無人化されているという。最後の有人灯台が長崎五島列島の女島で主人公有沢も赴任している。昭和32年の公開当時、灯台が無人化されることはもうわかっていたのだろうか。
灯台は孤独な建物である。
そこに孤独な仕事とその仕事を支える家族がいる。
都市や集落と切り離された孤高な人生が幾歳月と紡ぎだされていた。

2014年12月14日日曜日

ジョージ・ロイ・ヒル「スティング」

この作品ももういちど観ておきたい映画のひとつだ。
これまで何度も観てきて、何度もだまされている。
どこまでだましているのか、だまされているのか。観ているものたちも巻き込んでの大博打が繰り広げられる。
気持ちよく裏切られることがおもしろい映画には欠かせない。

2014年12月8日月曜日

岡本喜八「江分利満氏の優雅な生活」

下町探検隊のKさんが早稲田松竹で岡本喜八2本立てを観たという話を聞いて、江分利満氏は何としても近々観てみたいと思っていた。
優雅な生活とはいったいどんな生活なんだろうと思っていたけど、それってやっぱり人それぞれなんだと思う。
傍から見ればサントリーの宣伝部で広告をつくりながら、書いた小説が大ヒットするなんて、こんな優雅な生活はないだろうけど、当時も今も宣伝部ってたいへんなんだよな、とも思う。
母の死に接して、泣きながらお茶漬けをすするシーンが何とも哀しくて、印象的だった。
それにしても小林桂樹はよくしゃべる。「名もなく貧しく美しく」とは対照的だ。