2014年9月26日金曜日

黒澤明「椿三十郎」

「でもな、本当にいい刀は鞘に入ってるもんだ。お前らもおとなしく鞘に入ってろよ!」
三船敏郎の最後の台詞が印象に残る。
原作は山本周五郎「日日平安」だ。コミカルな短編であるが、映画ではさらにおもしろく再構成されている。
城代家老陸田の日々平安な人生と実直に生きるしか能のない甥の井坂伊織、室戸半兵衛。その愚直さが椿三十郎の生きざまを引き立てる。
入江たか子、団令子の女優陣や小林桂樹といった脇がこの喜劇にいい味わいを添えている。

2014年9月15日月曜日

成瀬巳喜男「乱れ雲」

昭和42年、成瀬巳喜男監督最後の作品。
司葉子の姉が草笛光子でその幼い息子が「バーハーハイ、ケロヨン!」と口にしている。まさしく僕らの子ども時代だ。
成瀬映画の加山雄三はどこかひねくれた青年だ。いや、一途で頑固な男というべきか。その愚直さがひとりの女の人生をゆさぶる。
海外転勤を前に司葉子に会いにくる。
「夏はいいなあ。僕は一年じゅうで夏がいちばん好きです。このままいつまでも夏がつづくといい」とその心情を吐露する。
「乱れる」では温泉酒場の女将だった浦辺粂子が加山の母親役。息子を思う、やはり一途で頑固な人を演じている。加山雄三が名優に囲まれてのびのび演技している。さすが若大将だ。

2014年9月8日月曜日

トラン・アン・ユン「ノルウェイの森」

村上春樹の本は何冊か読んでいるけど、映画化された作品を観たことがなかった。
といってもそれほど多くの作品が映画化されているわけではないので、この「ノルウェイの森」が、あるいは市川準の「トニー滝谷」がはじめての村上春樹原作映画という人も多いことだろう。
なんどか読んでいる原作からはあまり「生」と「死」みたいなことを意識したことがない。高校時代の親友に先立たれた不幸な大学生の物語という印象しかない。
それにしても村上春樹の書いた台詞を誰かが言うというのは、どことなく居心地悪さが感じられるものだ。

2014年9月2日火曜日

リュック・ベッソン「ルーシー」

リュック・ベッソン監督の映画は何本か観ていると思うのだけれど、どうも思い出せない。
いちばんはじめに観たのは「サブウェイ」で、それだけは憶えている。
イザベル・アジャーニが断然素敵だった。
今回はスカーレット・ヨハンソンがきれいきれいな人だけでなく、アクション映画の添えもの的役でもなく、完璧にどろどろに主役となっている。
SFXやカーチェイスは今や娯楽映画には欠かせない演出なんだろうけど久しぶりに観て、とても疲れた。