2018年11月21日水曜日

今村昌平「復讐するは我にあり」

緒形拳は、野村芳太郎監督「砂の器」の印象が強いせいか、あまり悪人に見えない。
「魚影の群れ」(相米慎二監督)で見せた頑固な漁師、「鬼畜」(野村芳太郎監督)における気弱な印刷屋など幅広い役をこなす名優であるには違いないが、強盗殺人鬼という設定には多少違和感をおぼえる。
先日『脇役本』(ちくま文庫)というおもしろい本を読んだ。
脇をかためる名優たちの残した本を紹介している。
殿山泰司、加藤嘉、清川虹子、北村和夫。
この映画もすばらしい脇役に支えられていた。

2018年11月8日木曜日

野村芳太郎「疑惑」

松本清張の作品は北陸がよく似合う。
事件は富山で起きた。
岩下志麻と桃井かおり。
彼女らは本当にそういうキャラクターの人であると思わせてしまうほど迫真の演技を見せてくれる。
そして全編に張りつめた空気を描くことに関しては野村芳太郎の右に出る者はいないだろう。

2018年11月6日火曜日

野村芳太郎「しなの川」

主演も主題歌も由美かおる。
おまけにヌードシーンもありで一見、アイドル映画かと思えるが、旅をする=移動する緊迫感や加藤嘉、浦部粂子ら名脇役を配するところなど随所に野村芳太郎らしさが際立つ。
徐々に謎解きされていく展開は単純であるけれど、十日町や長岡、伊豆、佐渡など挿入される風景が美しく、それだけでも満たされる映画だと思う。

2018年11月5日月曜日

大森研一「ポプラの秋」

湯本香樹実の原作『ポプラの秋』を読んだのは長女が小学生の頃だったか。
児童文学かと思っていたが、映画になってみるとずいぶん大人の作品なんだと思う。
あるいは大人の映画をめざしたのかもしれない。子どもの映画にもできただろう。
ポプラの葉がきらきら輝いていたり、枯葉のかさかさ鳴る音が心地い映画である。
カメラマンは中堀正夫さんだった。
世の中の映画がこんなにすがすがしいものばかりだったら、日本はもっと幸せな国になっていただろうと思う。