2013年11月25日月曜日

国本雅弘「おにいちゃんのハナビ」

ヤッさんは電通映画社のCMディレクターだった。
BSプレミアムで「おにいちゃんのハナビ」を観た。2009年に亡くなったヤッさんの最後の作品ではないろうか。
高良健吾が引きこもりの青年役としていい演技をしている。華役の谷村美月の友人のひとりが剛力彩芽だ。脇もいい。大杉蓮は地味な役ほど味が出るし、塩見省三ははまり役だ。森康子も僕にとってはとてもリアルな老人役である。
物語の構成要素として、白血病、花火、引きこもりとくれば大方筋書きは読めてしまう。いつ泣かせるのかとこちらも待ちかまえてしまう。
いちばん泣けたのは兄太郎が華に携帯電話を買ってあげたシーンだった。

2013年10月28日月曜日

松本千晶※「ラジオの産声」

ムサビの大学祭を訪れた。
展示物やイベントが多く、半日ではすべてまわりきれない。
ムサシネというシアターを訪ねる。以前は実験的なコマ撮りアニメーションや日常的ライトドラマが多かった、そんな印象があったけど、昨日観たのは秋葉原ガード下でラジオ商を営む高齢の女性にスポットをあてたドキュメントだった。内田ラジオアマチュアショールームは僕も何度ものぞいている。管球式のヴィンテージラジオをはじめとした旧式ラジオとそのパーツを扱う店だ。
母が高齢なせいか妙に共感したのだが、この短編が実によくできている。秋葉原電気街をつくった露天商の歴史的考証などをまじえながらの本格的なドキュメントなのである。脚本が素晴らしい。
近く、秋葉原ガード下の秋葉原ラジオセンターはJR東日本に敷地を返し歴史の彼方に葬り去られる運命にあるという。なんとも哀しい話ではないか。

※ツイッターでこの作品の監督はどなたかと問いかけたところ、武蔵野美術大学映像科の方に教えていただきました。ありがとうございました。

2013年5月20日月曜日

五所平之助「マダムと女房」


天気がよければ神宮に明治対慶應の3回戦を観に行くつもりでいたが、あいにくの雨で中止。ここで明治が負ければ、優勝は直接対決を待たずに法政に決まるという局面だ。13時からBSプレミアムで山田洋次監督が選んだ日本の名作100本の再放送があるというので観てみた。
1931(昭和6)年製作、日本初の本格的トーキーであるという。渡辺篤と田中絹代。
60分に満たない短い喜劇であるが、銀幕からはじめて音が聴こえてくる歴史的な作品として随所に工夫されていて楽しめる。
タイトルクレジットが時代を感じさせない斬新な書体だった。昭和6年とはあるいはそんな時代だったのかもしれない。

2013年5月6日月曜日

成瀬巳喜男「稲妻」


母親が浦辺粂子。父親の異なる一男三女の兄弟の末が高峰秀子。次女の連れ合いが急死し、その保険金目当ての醜い人間模様が描かれている。原作は林芙美子だが、まだ読んでいない。
浦辺粂子は小津安二郎や成瀬作品にたびたび登場するいいキャラクターだが、この映画では準主役といってもいいくらい。独自の味わいをふんだんに発揮している。平凡で愚鈍でごく普通の母親である。
高峰秀子はバスガイドをしている。銀座などなつかしい東京が随所に顔を出す。
すぐ上の姉三浦光子が亡くなった夫の愛人を高峰秀子と訪ねるシーンがある。木橋を渡る。どうやら木場らしい。新田橋といい、今では赤い鉄橋に架けかえられている。
2013年のゴールデンウィークはこうして終わった。

2013年5月5日日曜日

小津安二郎「東京暮色」

父笠智衆と子連れで実家に帰って来た長女原節子、そして大学卒業後自分を見いだせないまま悪い連中と交友を続ける次女有馬稲子が雑司が谷の坂上の家に住んでいた。この坂から望む東京の風景は残されているのだろうか。はるか昔に家を出た母山田五十鈴は五反田の雀荘で働いていた。近くに池上線の高架があり、駅は大崎広小路だ。
ラストで男と北海道に旅立つ母。上野発の夜行急行津軽に乗り込み、長女の見送りを待つ。上野駅の12番線では明治大学の校歌を歌う若者らがいる。
母親の不倫、長女夫婦の不和、次女の堕胎と重いストリーのなかを淡々と生き抜く笠智衆。妙に軽快なB.G.M.はあたかも彼への応援歌であるかのようだった。

2013年2月3日日曜日

錦織良成「RAILWAYS」


昼ごろ、石神井公園ふるさと文化館で開催されている特別展「アトムが飛んだ日」を観る。草創期のテレビアニメーションはシンプルなつくりではあるけれど、当時幼かった僕たちの想像力をかきたてるにはじゅうぶん衝撃的な映像世界だった。
夜BSプレミアムで「RAILWAYS」を放映するというので観終わったらすぐ寝れるよう仕度を整えた。
実にシンプルな映画だ。ビジネスエリートがいくつかのきっかけを経て、電車の運転士に転身する。小さい頃からの夢をかなえる。
ものづくりに強い執着を持ち続ける親友にして同僚、夢をあきらめて運転士になった若者、夢さえも抱けず仕事に生涯をささげようとしている父を蔑む娘。脇のかため方もいたってシンプル。その抜けのいい物語をさらに後押しするようにのどかな故郷の空の下をひた走る2両編成の電車。
いいなあ。
いつかどこか、知らない町の小高い場所に三脚を立てて、通りすぎてゆくローカル線を撮影したいと思った。

2013年1月14日月曜日

成瀬巳喜男「放浪記」


午前中から思わぬ大雪。
先日借りてきた「放浪記」を観る。
作家として大成した林芙美子の家は中井に残る自宅だろうか。
高峰秀子が林芙美子に成りきった演技には当時賛否両論だったと聞く。
僕は名演だと思っている。
林芙美子の生きざまを身体表現でここまで描いた女優に魂を感じるのだ。

2013年1月12日土曜日

野村芳太郎「砂の器」


もういちど観ておきたい名画といえばもうこれしかない。
秀夫が千代吉に会いに駅に走ってくる。
三木謙一もそれを止めることはもうできない。
今西巡査部長が千代吉に青年になった秀夫の写真を見せる。
「そんな人、知らねえ」と嗚咽する千代吉。
これを泣かずにいられるか。

2013年1月3日木曜日

2013年1月2日水曜日

降旗康男「居酒屋兆治」


大晦日BSで見逃した居酒屋兆治を観る。
兆治とさよの話にフォーカスしている映画だった。原作ではほどよい縦糸になっていた印象だった。谷保のもつ焼き屋に集まる人間模様が味わいある横糸でむしろ映画としてはこちらを期待していたんだけどね。舞台が函館というのもちょっと違和感を感じた。
それにしても伊丹十三って役者としても素晴らしい。

2012年10月28日日曜日

森崎東「時代屋の女房」


大井町線のガード下の商店街で夏目雅子が魚を買う。残念ながら今はもうない。近々再開発されるらしいのだ。なかにし礼が九段に通っていた下神明から大井町へ向かう商店街だ。大坂四郎演じるクリーニング店は今でも横須賀線沿いにある。時代屋のなくなった今となっては貴重な風景だ。

2012年3月14日水曜日

佐藤武「チョコレートと兵隊」

神保町シアターで古い映画を観た。
佐藤武監督「チョコレートと兵隊」、1938年製作の東宝映画である。藤原釜足と沢村貞子が夫婦役。夫の勤める印刷所の娘が高峰秀子だ。昭和13年ということは高峰秀子が東宝に移籍して直後くらいの作品か。
この映画、実は近年アメリカでフィルムが発見されたという。アメリカが日本人の国民性の研究のため没収していたためともいわれている。国立近代美術館フィルムセンターに保管されているが、滅多なことでは上映の機会がないため、昨夜神保町シアターに出向いたというわけだ。
題名のチョコレートは明治チョコレートで、今でいうタイアップということか。質朴な地方の生活と戦意高揚と呼ぶにはややのどかな戦場シーンとが交錯する映画であるが、宣伝効果は抜群だったと思う。明治製菓に限らず、昭和の戦争時代、企業という企業はあまねく国策企業だったのだ。
ロケ地は北関東の渡良瀬川付近ではないかと思う。冒頭釣りを楽しむ親子のバックに鉄橋が見える。この風景は今どうなっているのか。

2012年2月14日火曜日

オリビエ・ダアン「エディット・ピアフ愛の賛歌」


劇場でも観、テレビでもいちど観ている。今回BSプレミアムで観るのは3回目。何回観てもいいね。マリオン・コティヤールがいい。

2012年1月25日水曜日

小石栄一「流れる星は生きている」


小説家新田次郎の妻、そして数学者藤原正彦の母藤原ていの原作は終戦後中国大陸からの引き揚げの記録だ。阿佐ヶ谷ラピュタで上映されると聞いて駆けつけた。主演は三益愛子。原作では引き揚げの苦労や悲惨さが強調されているが、映画では引き揚げ後の暮らし、そして夫の帰還までが描かれている。原作と映画には多少のズレはあるが、いずれも壮大な人間ドラマであることに違いはない。

2011年9月30日金曜日

溝口健二「赤線地帯」


溝口健二監督「赤線地帯」を見る。芝木好子の原作とはちょっと違った映画だった。三益愛子が玩具工場で働く息子に会いに行く哀しいシーンは四ツ木辺りか。犬のお母さんである若尾文子が圧倒的に美しく、したたかだ。

2011年5月31日火曜日

木下恵介「カルメン故郷に帰る」


こちらもレンタルDVD。木下恵介監督「カルメン故郷に帰る」は日本初の総天然色映画。現場は試行錯誤の連続だったようだ。バックアップとしてモノクロでも完パケられるようにしていたというエピソードがある。高峰秀子がちょっと頭の弱いストリッパー役。成瀬映画では見られない役を演じている。はちゃめちゃな話だけど、雄大な浅間の風景をバックにみんなが幸せになれる佳作だ。

成瀬巳喜男「流れる」


レンタルDVDでようやく成瀬巳喜男監督「流れる」を観た。幸田文の原作にほぼ忠実なストーリー。山田五十鈴、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子と豪華キャスト。圧巻は栗島すみ子。原作のキャラクター設定をほぼ完璧に体現しているのではないだろうか。高架を走る総武線、両国橋界隈の隅田川の風景など見所満載である。

2011年5月29日日曜日

豊田四郎「恍惚の人」


BSプレミアムで豊田四郎監督「恍惚の人」を観る。84歳立花茂造を演じる当時還暦前の森繁久弥が光る演技を見せている。1973年当時と現在の高齢者介護問題に対する見方、温度差には差があるだろうが、ある種普遍的なテーマであるはずだ。そういった意味では高峰秀子の有無をも言わさぬ芝居はすばらしい。昭子さんはタイピストのような仕事をしていた。「浮雲」を思い出した。有吉佐和子は高円寺界隈に住んでいたと聞くが、ロケ地もやはり杉並あたりだったのだろうか。

2011年5月22日日曜日

五所平之助「煙突の見える場所」


BSプレミアムで五所平之助監督「煙突の見える場所」を観る。観るというより、途中なんとか眠ってしまってストーリーは追えなかった。千住のお化け煙突が見える川の土手。今ではどのあたりになるのだろう。

2011年5月7日土曜日

成瀬巳喜男「浮雲」


録画(BSプレミアム)しておいた成瀬巳喜男監督「浮雲」を観る。仏印、東京、伊香保、伊豆、鹿児島、屋久島と(転々とロケ撮影しているとすれば)林芙美子の大作にふさわしいスケールの大きい映画だ。国境の島屋久島はさすがにロケ撮影はしなかったようだが、したたかにたくましく生き、そして死んでゆくゆき子役高峰秀子の演技が素晴らしい。

2011年4月17日日曜日

成瀬巳喜男「めし」


BSプレミアムで成瀬巳喜男監督「めし」を観た。平凡な日常の深層を描いた名作。南武線の電車が懐かしい。原節子という女優はスクリーン映えする顔立ちだが、内面に秘めた演技こそがその真骨頂といえるだろう。林芙美子の遺作となった原作は文庫のラインナップからすでに消えているが、機会があればぜひ読んでみたい。

2011年4月4日月曜日

小津安二郎「東京物語」

BSプレミアムで小津安二郎監督「東京物語」を観た。小津映画は日本映画の範たるものとして燦然と光り輝いているが、実はじっくり観るのは今回が初めて。銀座、浅草の古きよき東京の風景もさることながら、一分の隙もないキャスティングと独自の時空間の漂わせ方など完璧な映画だ。