2022年10月5日水曜日

デニス・ホッパー「イージー・ライダー」

録りためておいたハードディスクからこの映画を見つける。
カリフォルニアからニューオーリンズをめざして旅に出るキャプテン・アメリカ(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)。
大学生の頃、オートバイの免許を取って旅してみたいと思っていたことを思い出す。
それにしてもアメリカは広い。道はどこまでも続き、さまざまな人々を受け容れ、自由と保守といった思想の幅も広大だ。
自由が台頭し、迫害されはじめていた時代でもある。
同じ時代に生きて観ていたら、また違った感想を持っただろうが、同時代に生きて、観なかったことに少しだけ救われるような複雑な映画だった。

2022年4月30日土曜日

ハル・アシュビー「レッツ・スペンド・ザ・ナイト・トゥゲザー」

1983年公開のローリングストーンズドキュメンタリームービー。
81年のツアーをベースに製作されているので83年リリースのアルバム「アンダーカバー」に収録された楽曲はない。
当時の新曲は「スタート・ミー・アップ」(同名でアルバムタイトルになっている)、「友を待つ」である。
選曲が渋い。
玄人好みの印象を受ける。
ひさしぶりにストーンズを堪能した。

2022年4月29日金曜日

宮崎駿「魔女の宅急便」

もう何度も何度も観ているのに、テレビで放映されるとついつい視てしまう。
子どもの弱さが哀しくて、せつなくて、少しだけうれしい映画だ。
公開されて30年以上経つというのにその読後感は変わらない。
古い映画が好きなのは、つくり手の「若さ」に出会えるからだ。

2022年4月23日土曜日

馬場康夫「私をスキーに連れてって」

1987年は今から35年前。
昔といえば昔だが、出演者の多くと自分が同じ世代であると思うとそう遠くない昔に思えてくる。
スキーは流行っていいたけれど、僕は誰かをスキーに連れて行ったこともなければ、連れて行かれたこともない。いちどもスキーをしたことがない。
三上博史、沖田浩之、原田貴和子がアマチュア無線のトランシーバーで交信するシーンがある。
この映画によってアマチュア無線ブームが再燃したと言われているが、そうだったのかなあと思う程度。
たしかに携帯電話のなかった時代、無線は便利だったろうと思う。

2022年2月28日月曜日

ベルナルド・ベルトルッチ「ラストエンペラー」

1987年公開の大作である。
劇場では観ていなくて、テレビで放映されたときに何度か観ている。
公開された当時は、清王朝の最後であるとか、満州建国など歴史的なことにはほとんど興味がなかったことを思い出す。
愛新覚羅溥儀の弟溥傑は昭和天皇の遠縁にあたる嵯峨浩と結婚する。
嵯峨侯爵邸は現在の杉並区郷土資料館になっている。
浩はこの邸から、結婚式場である軍人会館(現九段会館)に向かったという。

2022年1月26日水曜日

フレッド・M・ウィルコックス「禁断の惑星」

1956年に公開されたSF映画。
2200年には宇宙への移民がはじまっていた。
消息を絶った移民団の捜索に出かける宇宙船(空飛ぶ円盤)がたどり着いたのはアルテア4という惑星。
その星には地球よりも多くの酸素があった。
かつて住んでいた先住民族が高度な科学技術を駆使して、莫大なエネルギーを生成する設備を持っていた。
このエネルギーの源が原子力であるとすれば、化石燃料を燃やし続けた地球より空気はきれいなはずだ(2200年にはおそらく温室効果ガスも排出されてはいないだろうが)。
ずっとこの星に住んでいる博士の片腕ともいうべきロボット(ロビー)がすぐれている。
見た目はブリキのおもちゃのようだが(というかこのロボットをモデルに多くのおもちゃがつくられたのかもしれない)、既存の物質を分析し、再生することができる。
こんな都合のいいロボットは他に類を見ない。

2022年1月17日月曜日

野村芳太郎「影の車」

ラピュタ阿佐ヶ谷で松本清張特集。
加藤剛演じる主人公浜島は南房総千倉町瀬戸の出身(これは映画だけのオリジナルな設定であるらしい)。
瀬戸は千倉駅周辺の集落で大きな砂浜がある。
僕が幼少の頃から訪ねてきた七浦、白間津は千倉町でも白浜町に接するはずれ。
瀬戸と聞くと千倉町の中心部というイメージがある。
もちろんロケ地は千倉ではなかろう(瀬戸に磯釣りをするような場所はないと思う)。
北陸のイメージが強いが、それは「ゼロの焦点」「鬼畜」など、野村芳太郎の観過ぎかもしれない。
岩下志麻扮する小磯泰子と浜島は幼い頃、千倉町で出会い、都心のベッドタウンの路線バスで再会する。
野村芳太郎、加藤剛、岩下志麻とくれば、この先どんな事件が起こるのか、固唾をのんで見守るしかない。
放っておけば単なる不倫ドラマである。
事件はいつどうやって起こるのか。
少年時代の重い記憶を引きずって生きる加藤剛。
「点と線」や「砂の器」のように犯人を追いつめる映画ではなく、追いつめられた者が犯罪を犯す心理サスペンスドラマだ。
原作も読んでみたくなった。

2022年1月16日日曜日

中平康「あいつと私」

作詩家のなかにし礼が亡くなって1年。
先日BSTBSで追悼番組を放映していた。
なかにし礼といえば、石原裕次郎との出会ったエピソードが知られている。
当時の写真で見る石原裕次郎はすでに貫禄十分。
僕らの世代で石原裕次郎といえば、ドラマーやボクサーというより、刑事である。
なかにし礼と出会った裕次郎はすでに刑事っぽさがあったのではないかと思う。
昭和36年公開のこの映画ではまだまだドラマーに近いが、育ちのよさが色濃く描かれている役である。
おおらかでやんちゃな裕次郎。
時代が求めていたのはそんな裕次郎だったのだ。

2022年1月11日火曜日

ジョン・ヒューストン「天地創造」

ずいぶん前から録画はしてあったが、通しで観る機会がないまま何年も寝かせてしまった。
『旧約聖書』創世記から7つのエピソードが取りあげられている。
聖書が身近な国や地域の人たちが見るのとわれわれの見方とではやはり大きな違いがあるのだろう。
アダムとイヴの子孫であるノアに神は方舟をつくらせる。
大洪水はやがておさまり、新天地にたどり着く。
だいたいいつもこの辺まで観て、それからあとはうたた寝したり、観るのをやめてしまう。
今日は最後まで観た。

2022年1月7日金曜日

古沢憲吾「アルプスの若大将」

1966年の作品である。
高度経済成長の最中、豪華なヨーロッパロケを敢行している。
今なら超豪華な大作でもないかぎり、そうやすやすと海外ロケはしないだろう。
おそらく映画がテレビに凌駕されていたであろう時代に、である。
昔の映画はテレビドラマをつくるように短期間でつくられていたと思う。
みんながせっせと映画をつくり、消費していた。
ある意味ではいい時代だった。
青大将田中邦衛はこの作品でもかっこいいスポーツカーで東京のなつかしい風景を紹介してくれていた。

2022年1月5日水曜日

野村芳太郎「張込み」

この10年少々で、いちばん観た監督は、おそらく成瀬巳喜男、次が野村芳太郎ではないか。
どうしたわけか気に入っている。
ラピュタ阿佐ヶ谷前回の企画「のりもの映画祭」がまだまだ続くようなラインナップの新特集松本清張。
いきなり鹿児島行きの夜行急行からはじまる。
東京駅で新聞記者に見つかった刑事ふたり、柚木と下岡は省線で横浜駅に向かい、間一髪で東京始発の急行に乗り込む。
横浜駅のホームには「やっさもっさ」でおなじみのシウマイ娘がいる。
1950年代の風景である。
列車は西へ。
静岡、大阪を過ぎ、まだ電化されいなかった山陽本線で広島を過ぎる。
C62やC59など、当時山陽本線の主力蒸気機関車が力強く牽引する。
そして電気機関車が関門海峡トンネルをくぐる。
もうこれだけで主菜なしにお腹いっぱいである。
ふたりの刑事は佐賀で容疑者があらわれるであろう元恋人の住む家の前の旅館に滞在する。
張込み自体は大した話ではないし、下岡刑事役の宮口精二も昼寝ばかりで「七人の侍」のときのようにかっこよくない。
容疑者石井(田村高廣)とその元恋人さだ子(高峰秀子)がいい。
このふたりを主役にしても一本映画ができそうだ。
そうなればこちらの「張込み」は当然、サイドストーリーになるだろう。

小林恒夫「点と線」

ついこのあいだまで「のりもの映画祭」という特集を組んでいたラピュタ阿佐ヶ谷。
新年第一弾の企画は松本清張である。
松本清張原作の映画といえばこれだ。
テレビドラマで視ていたせいか、映画も観ていたつもりだった。
高峰三重子、山形勲…、やはり観ていない。
この、不朽の名作を観ていなかった。
それにしても松本清張特集になったもの、まだまだ「のりもの映画祭」を色濃く残しているラピュタ阿佐ヶ谷であった。

2022年1月3日月曜日

マイケル・アンダーソン「八十日間世界一周」

正月は特にすることもなく、箱根駅伝やラグビー大学選手権などを見て過ごす。
駅伝は長いことサッポロビールがスポンサーになっている。妻夫木聡が多彩なゲストを訪ねてインタビューするCMになっている。
B.G.M.には聴きおぼえがある。
ヴィクター・ヤングが作曲したArround The World、1957年に公開された「八十日間世界一周」のテーマ音楽である。
昨年だったかテレビで放映されたときに録画しておいた。
CMになるたびにせっかく録画した映画を見なくてはという気分になったので駅伝終了後に観た。
19世紀、人間は高度な移動手段を手に入れていた。

2022年1月2日日曜日

野村芳太郎「五瓣の椿」

原作は山本周五郎のミステリー。
時代劇になってはいるが、現代劇でもおかしくない普遍性を持っている。
周五郎の代表作と言ってもいいほどの名作だ。
この映画のほか、テレビドラマとしても何度か制作され、放映されている。
ドラマ版をいくつも視たわけではないが、多くの人が野村芳太郎監督、岩下志麻主演のこの映画を高く評価する。
野村と岩下、さらには脇役の一人ひとりにいたるまで、このスタッフ、キャストでなければできなかった完成度の高い映画である。