2022年1月5日水曜日

野村芳太郎「張込み」

この10年少々で、いちばん観た監督は、おそらく成瀬巳喜男、次が野村芳太郎ではないか。
どうしたわけか気に入っている。
ラピュタ阿佐ヶ谷前回の企画「のりもの映画祭」がまだまだ続くようなラインナップの新特集松本清張。
いきなり鹿児島行きの夜行急行からはじまる。
東京駅で新聞記者に見つかった刑事ふたり、柚木と下岡は省線で横浜駅に向かい、間一髪で東京始発の急行に乗り込む。
横浜駅のホームには「やっさもっさ」でおなじみのシウマイ娘がいる。
1950年代の風景である。
列車は西へ。
静岡、大阪を過ぎ、まだ電化されいなかった山陽本線で広島を過ぎる。
C62やC59など、当時山陽本線の主力蒸気機関車が力強く牽引する。
そして電気機関車が関門海峡トンネルをくぐる。
もうこれだけで主菜なしにお腹いっぱいである。
ふたりの刑事は佐賀で容疑者があらわれるであろう元恋人の住む家の前の旅館に滞在する。
張込み自体は大した話ではないし、下岡刑事役の宮口精二も昼寝ばかりで「七人の侍」のときのようにかっこよくない。
容疑者石井(田村高廣)とその元恋人さだ子(高峰秀子)がいい。
このふたりを主役にしても一本映画ができそうだ。
そうなればこちらの「張込み」は当然、サイドストーリーになるだろう。

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