2020年1月30日木曜日

佐藤純彌「おろしや国酔夢譚」

大黒屋光太夫のすぐれた功績は、その奇異な体験を書き残したことにある。
江戸時代から漂流民は多くあったと言われる。
アメリカやロシアに漂着した者はむしろ幸運な方で、たいてい破船して海の藻屑となっている。
光太夫ら白子浦の水主たちは、カムチャツカの島に流れ着いた。
可能性としてはかなり低い。
そして漂流民となった日本人が当時のロシアで生還する可能性は皆無に等しかった。
日本への帰還も奇跡なら、一連の漂流民の生活が書き記されていたことも奇跡である。
まさに奇跡の映画だ。

2020年1月20日月曜日

山崎貴「ALWAYS三丁目の夕日'64」

正月休みに録画した「ALWAYS三丁目の夕日」を立て続けに観た。
この映画の見どころは、コンピュータグラフィックスで再現されたなつかしい東京の風景、そして細かに描かれた小道具の数々など当時のシズル感ではあるけれど、何より素晴らしいと思えるのは、茶川竜之介(吉岡秀隆)と古池淳之介(須賀健太)の会話である。
ふたりの演技は秀逸なのだが、とりわけ吉岡の劇中劇的な、芝居には感嘆する。
淳之介に言いたくない台詞を言う、とりたくない態度をわざととる。
そんな芝居が観ているものをしっかり泣かせてくれる。
間に入ったヒロミ(小雪)も難しい表情を見事に演じている。