2017年4月14日金曜日

スティーブン・スピルバーグ「ターミナル」

ほとんどのシーンがジョン・F・ケネディ国際空港である。
大きな空港だからさまざまなシーンにめぐり会うことができる。それでも舞台は空港。
そういった意味ではミニマルな映画だ。
もし自分が同じような境遇になったとしたら、やはり英語が理解できないのはつらいだろうな。英語が話せるのに話せない役を演じるのもたいへんだろうけど。
ピーナツ缶のエピソードはいい話だった。
村上春樹の『セロニアス・モンクのいた風景』を読んでみたくなった。

2017年3月10日金曜日

ロバート・ゼメキス「フォレスト・ガンプ」

ロバート・ゼメキスは時空間を縦横に飛びまわって映画をおもしろくする天才だ。
この映画はとりわけ観る人を幸せにする特別な才能を持っている。
バックに流れるその時代時代の音楽がまた心地いい。
今、幸せな気分に包まれている。

2017年3月8日水曜日

五所平之助「黄色いからす」

外地で抑留されていた父親が帰ってくる。
息子と会うのははじめただ。
帰還後、仕事も息子との接し方もギクシャクする父。終戦後しばらくのあいだ、もしかするとどこででも見られた光景なのかもしれない。
鎌倉の海辺の町で小さな事件がつみかさなる。家族はやがて危機を乗り越えていく。
それにしても子どもというものはなんとたっぷりとした時間を過ごしているのだろう。一日が長い。うらやましい限りである。

2017年2月27日月曜日

小津安二郎「風の中の牝鷄」

四方田犬彦が『月島物語』の中で紹介している小津安二郎監督の松竹映画。
千葉泰樹の「下町(ダウンタウン)」同様、夫の復員を待つ妻がひと夜限りの過ちをおかす。
女性がひとりで(あるいは子ども連れて)生きていくことが過酷な時代だった。
夫佐野周二が月島を訪ねる。隅田川沿いにたたずむその背後に勝鬨橋が見える。
四方田によれば、この作品と翌年の「晩春」以降、下町はわずかな例外をのぞいて小津作品から姿を消し、舞台は東京近郊の山の手や湘南に移っていく。
小津の生まれは深川だった。

2017年2月21日火曜日

実相寺昭雄「帝都物語」

原作は荒俣宏。脚本が林海象。
「怪奇大作戦」や「シルバー仮面」の世界に実相寺昭雄の映像詩的な世界がまぜ合わさったような作品。
昭和の森に銀座通りを再現したオープンセットをつくって話題になった。市電も走らせた。鉄道少年実相寺には欠かせない巨大小道具だったにちがいない。
1980年代後半はフィルムからビデオへの移行期。いたずら好きの実相寺昭雄が果敢に挑んだハイビジョンVFX映画だ。

2017年2月17日金曜日

黒澤明「まあだだよ」

黒澤明30作目の作品。
原作は内田百閒。
戦中戦後の目まぐるしい時代をのどかな師弟愛でつつみこんでいる。
松村達雄はいつもいいお父さんだったり、目立たないけどいい芝居をする脇役だったりする。今回は先生役でしかも主役。ちょっと頼りなさそうな主役だけれど内田百閒がモデルならそれも納得できる。
奥さんは香川京子、教え子の代表格は井川比佐志。ユーモアに富んだ先生のキャラクターを所ジョージや寺尾聰、平田満、岡本信人らがしっかり支えている。
先生とともに黒澤明の人生もその数年後、静かに幕を閉じることになる。
これが最後の作品であると思うとちょっとうらやましい映画人生だったのではないかと思えてくる。

2017年1月24日火曜日

山本薩夫「皇帝のいない八月」

戦後30年以上経た1978年。僕は大学生になった。
大学には平和憲法を守るんだと声を上げる若者たちが多くいた。
寝台特急さくらをジャックするクーデター。憲法を改正し、ふるきよき美しい日本を取り戻そうと行動を起こす元自衛隊員がいる。
元自衛隊員の妻は吉永小百合。彼女とかつて将来を誓い合った雑誌記者が山本圭。
複雑な人間関係がひとつの列車に乗り合わせる。
三國連太郎、丹波哲郎、佐分利伸、大地喜和子、高橋悦史、さらには岡田嘉子に渥美清とキャストも豪華な作品だ。
ラストシーン。銀座の歩行者天国を闊歩する若者たち。平和を当たり前のことのように思っていた自分が映っているようだ。

2017年1月23日月曜日

野村芳太郎「ゼロの焦点」

ごく普通の(仮にそんなものがあるとすればだが)殺人事件が松本清張の眼鏡を通して見ると複雑な様相を呈してくる。
人を殺す動機は、憎しみでも恨みでも金銭トラブルでもなく、消し去りたい暗い過去なのだ。
それでもってやっかいなのは誰もが好きで暗い過去を引きずって生きているわけではないということだ。
松本清張の想像力はそんな人間の本質のど真ん中を抉っていく。

2017年1月4日水曜日

マイク・ニコルズ「卒業」

もう何度か観ている映画なのに、ちゃんと観た感じがしない。
どことなく浮ついた青春映画だからだろうか、あるいは観るものをして浮ついた気持ちにさせてしまうからだろうか。
明日から仕事という正月休みの最後に観たせいもあるかもしれない。この映画を観るときはいつも浮ついて観ていたのかもしれない。
それにしても強引というか豪快なストーリーだ。青春映画ってやつはこういうことでいいんだという勢いすら感じさせる破天荒な名作だ。

2017年1月2日月曜日

ロバート・ゼメキス「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

大晦日から元旦にかけて、あまり映画を観ない僕が一年かけて観るくらいの映画をNHKBSで放映していた。
とりわけ深夜の「ゴッド・ファーザー」はたて続けに三本観たかったけれどあまりに深夜過ぎた。
元旦の午後、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を観る。細かい時代考証がよくなされている秀作だ。タイムスリップものやタイムトラベラーものは突きつめれば突きつめるほど矛盾をかかえるので難しいはずなのに。
ただ今観てみると起点となる1985も1955も同じように「昔」に思えてしまうのがかなしい。

2016年12月28日水曜日

ロバート・ゼメキス「ポーラー・エクスプレス」

今年のクリスマスも何となくあわただしく過ぎていった。ゆっくり映画でも観られたらよかったのに。
ちょっと気のはやい話だけど来年のクリスマスに観ようと思っていた映画を観る。
アメリカ人は列車の屋根の上とジェットコースターが大好きなんだな。
娘が小さいころ、サンタさんて本当にいるのと訊かれた。
もちろんいるよ、君の心のなかに。
そう答えた。

2016年12月1日木曜日

大森壽美男「アゲイン 28年目の甲子園」

原作は重松清。
現実の重い足枷を引きずる男たちが28年の歳月を経て、甲子園に挑む。
33試合連続安打の高橋慶彦がいる。セーブ王の角盈男がいる。
キャストの中には実際に甲子園をめざした元高校球児もいるという。撮影で踏んだ甲子園の土の感触はさぞかし感慨深いものだったのではないかと思う。
さわやかな中年男子のドラマだ。

2016年11月25日金曜日

レジス・ロワンサル「タイピスト!」

以前、早稲田松竹で予告編を見た。
しばらく忘れてたけどようやく観ることができた。
田舎から出てきた女の子のスポ根物語。ちょっとめんどくさい男との恋愛ドラマがからみつく。
タイプライターの早打ち世界大会ってほんとうにあったのどうか知らないけれど、1950年代のお話だから、それくらいのことはあっていい。それにしても50年代のファッションってとてもおしゃれだ。
オープニングのアニメーションもいい。音楽もいい。
やっぱり思い出してよかった。

2016年11月24日木曜日

五社英雄「226」

豪華キャストによる作品だ。
これだけのスターがほんとうに必要だったのだろうか。
事件そのものはすぐはじまって、すぐ終わる。26日はあっという間に終わる。そこからが長い。キャストが豪華なせいもある。男性陣はともかく、女優も粒ぞろいである。
なんだけどなあ。

2016年11月21日月曜日

マーティン・スコセッシ「アビエイター」

ケイト・ベッキンセイルの出演している映画をさがしていたら、この映画が引っかかった。
10年ほど前にアメリカの実業家ハワード・ヒューズの半生を綴った映画として公開された。ヒューズも莫大なお金を投じて映画製作をしたそうだが、この映画も相当な費用がかかっている(ように見える)。あの巨大な飛行機ハーキュリーはまさか実写ではあるまい。ミニチュアでもないだろう。C.G.にしてはよくできている。
いろいろよくできているのでケイト・ベッキンセイルが目立たなかったではないか。

2016年11月10日木曜日

テイ・ガーネット「郵便配達は二度ベルを鳴らす」

原作はジェームズ・M・ケインの小説(1934年)。
幾度か映画化されているせいもあるだろう、その魅力的な邦題だけは記憶に残っていた。お名前だけは存じ上げております、と答える以外に術のないまったく知らない人みたいに。
ラストシーンでどうしてこのような題名が付けられたのかがわかる。ずいぶんまわりくどい話だなとは思う。
もちろん最後まで郵便配達員はやってこない。

2016年11月8日火曜日

野村芳太郎「鬼畜」

東武東上線の男衾から物語ははじまる。
舞台は川越の印刷屋。
東京タワーや上野の70年代後半の風景に出会える(松本清張が参考にしたという実際の事件はその20年ほど前に起きている)。もちろん景色を楽しんでいるどころじゃない。
印刷屋の店主は長男の死に場所をさがして北陸を旅する。昔仕事で訪ねた福井の海がなつかしい。
父親をかばう長男利一はまさに「砂の器」の秀夫の父千代吉(加藤嘉)のようだった。

2016年11月4日金曜日

蔵原惟繕・深作欣二「青春の門」

五木寛之の大河小説『青春の門』は幾度か映画化、ドラマ化されている。
今回観たのは1981年公開、信介役は佐藤浩市。彼のデビュー作である。
菅原文太、若山富三郎、松坂慶子とキャストも豪華だ。
北九州には巨大な製鉄所があった。
直方、田川、飯塚あたりは網の目のように鉄道が敷かれ、蒸気機関車が闊歩するように走っていた。
日本の青春時代、筑豊炭田はまさにエネルギーの源だった。

2016年11月1日火曜日

黒木和雄「父と暮らせば」

原爆ドームをはじめて見たのは高校卒業間際の3月だった。40年近く前のことだ。
原作は井上ひさしの戯曲。まだ読んでいない。
ヒロシマについて、僕はあまりに知らなさ過ぎた。
「黒い雨」にしろ、この映画にしろ観ておくべきだった。原爆ドームを見る前に。
原子爆弾の物理的破壊力が悪とされている。放射能汚染による身体的な被害も深刻だ。それにもまして人の心を蝕んでいく。生き残った娘と生き残れなかった父がそれを語ってくれる。
もともとが演劇だったこともあり、出演者はごくわずか。セットもきわめてシンプル。
好きな映画だ。

2016年10月30日日曜日

石井裕也「舟を編む」


ついこのあいだ三浦しをんの『舟を編む』を読んだばかりだと思っていた。
もう4年以上経っている。はやいものだ。
原作を読んだ当初、馬締に松田龍平のイメージはなかった。香具矢も宮崎あおいではなかった。
でも観終えてしまえばそんなことはどうでもよくなる。
前衛音楽家和賀英良はその後、国語学者になって辞書の監修者になったのだとどうでもいいことを思ってしまった。