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2024年1月8日月曜日

黒澤明「生きる」

久しぶりに映画を観た。
いやいや映画をまったく観ていないわけではない。テレビで放映される「インディ・ジョーンズ」や「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「ホーム・アローン」などは毎度毎度楽しみに観ている。先日も「千と千尋の神隠し」を観たばかりだ。
NHKで黒澤明監督「生きる」を放映していた。志村喬の好演で評価の高い名作であるが、観るのははじめてである。志村の演技にましてすごいと思わせたのは斬新な構成である。映画の後半、一気にたたみかける編集の素晴らしさ。さすが世界のクロサワである。

2019年8月25日日曜日

黒澤明「天国と地獄」

ずいぶん昔のことだが、ある靴メーカーの広告をつくっていた。
その会社の工場は横浜の日吉にあり、いちど見学させてもらった。
ほとんど機械化されていたけれど古くからいる職人もいて、クラフトマンの世界なのだと思った。
主人公権藤は靴職人から常務取締役まで登りつめた男で、靴づくりに真摯に向き合って生きてきたと工場の古参(東野英治郎)が証言する。
この工場は日吉にあった工場に違いない。
横浜、鎌倉、小田原とロケ撮影されている。主たる舞台は横浜黄金町であるが、スタジオにセットを組んだシーンも多いという。
遠景で見る横浜はまだ空が高かった。

2019年4月30日火曜日

黒澤明「七人の侍」

志村喬、三船敏郎、木村功、稲葉義男、千秋実、加東大介、宮口精二。
黒澤映画でおなじみの名優たちが野武士たちを討つ。
三船敏郎以外はすべてかっこいい。
とりわけ宮口精二がいい。
今リメイクしたらどんなキャストになるだろう。
勘兵衛・佐藤浩市、菊千代・木村拓哉、勝四郎・中村倫也、五郎兵衛・浅野忠信、七次郎・鈴木亮平、平八・香川照之、久蔵・嶋田久作。
嶋田久作はもちろん「帝都物語」の嶋田久作だ。
平成最後の暇な休日、くだらないことを考えている。

2019年4月21日日曜日

黒澤明「用心棒」

三船敏郎になにかおもしろいことをやらせるというのが、黒澤明の大きなテーマのように思える映画がある。
この映画の三船もいたずら小僧のような役柄をうまくこなして、監督と観客の期待に応えている。
日本を代表する俳優ではあるものの、三船敏郎はけっして演技派ではない。
こう言ってしまっては申し訳ないが、存在感の役者である。
芝居としては仲代達矢の方が真に迫っていると思う。
それでもどちらを主役にするかといえばやはり三船なのである。
うまく言えないけれどそれが黒澤映画なのだ。

2019年1月30日水曜日

黒澤明「羅生門」

何度か観ている映画だが、ヴェネツィア国際映画祭やアカデミー賞で高い評価を受けた作品だけについかしこまって観ていたように思う。
歳をとったせいだろうか、こういった傑作をようやくリラックスして観ることができるようになった。
久しぶりに観てみるとなんともおもしろい。よくできている映画だ(と僕なんぞが口にするセリフではないけれど)。
シチュエーションは3つしかない。
終戦間もない日本で贅を尽くすことなく、アイデアで世界に挑んだ名作だ。

2018年10月8日月曜日

黒澤明「隠し砦の三悪人」

60年前の映画である。
黒澤作品はわずかしか観ていないが、ユーモアがあり、ちょっと真似したいアイデアがある(ように見える)。
後世の映画監督たちは穴が開くほど黒澤明を観たに違いない。
三船敏郎はいつも通り(決してうまい役者ではない)だが、脇がいい。

2017年2月17日金曜日

黒澤明「まあだだよ」

黒澤明30作目の作品。
原作は内田百閒。
戦中戦後の目まぐるしい時代をのどかな師弟愛でつつみこんでいる。
松村達雄はいつもいいお父さんだったり、目立たないけどいい芝居をする脇役だったりする。今回は先生役でしかも主役。ちょっと頼りなさそうな主役だけれど内田百閒がモデルならそれも納得できる。
奥さんは香川京子、教え子の代表格は井川比佐志。ユーモアに富んだ先生のキャラクターを所ジョージや寺尾聰、平田満、岡本信人らがしっかり支えている。
先生とともに黒澤明の人生もその数年後、静かに幕を閉じることになる。
これが最後の作品であると思うとちょっとうらやましい映画人生だったのではないかと思えてくる。

2014年9月26日金曜日

黒澤明「椿三十郎」

「でもな、本当にいい刀は鞘に入ってるもんだ。お前らもおとなしく鞘に入ってろよ!」
三船敏郎の最後の台詞が印象に残る。
原作は山本周五郎「日日平安」だ。コミカルな短編であるが、映画ではさらにおもしろく再構成されている。
城代家老陸田の日々平安な人生と実直に生きるしか能のない甥の井坂伊織、室戸半兵衛。その愚直さが椿三十郎の生きざまを引き立てる。
入江たか子、団令子の女優陣や小林桂樹といった脇がこの喜劇にいい味わいを添えている。

2014年8月31日日曜日

黒澤明「赤ひげ」

山本周五郎原作、黒澤明監督という名作メーカーによる作品。
三船敏郎、加山雄三という新出、安本ラインは鉄壁のキャスティングだ。内藤洋子の可憐さもさることながら、おとよ・二木てるみ、長坊・頭師佳孝、天才子役ふたりの演技が光る。
あっという間の3時間だった。

2014年7月20日日曜日

小泉尭史「雨あがる」

山本周五郎の『おごそかな渇き』を読む。
おごそかな渇きをおぼえたわけではないのだが、レンタルDVDで「雨あがる」を観る。
地方都市で旨い蕎麦に出会い、帰京後そのまま神田の蕎麦屋でまた蕎麦をたぐるみたいな、上手なたとえじゃないけれど、そんな映画の観方。
最後、主君が三沢伊兵衛を追って、馬を駆る。このシーンが映画にしかないところ。
そのあとどうなるかって?そんなこと、ここには書かないよ。

2014年6月23日月曜日

黒澤明「どですかでん」

山本周五郎の『季節のない街』が原作。
この小説には『青べか物語』の浦安のように特定できる地域が見当たらない。
黒澤明はこの映画を南葛西あたりのロケ地と東宝のスタジオで撮ったという。公開が1970年、世界の国からこんにちはの年だから、すでに貧民窟も少なくなっていただろうし、登場人物の個性というか人間味を演出するには美術セットが必要だったにちがいない。
たんばさんの渡辺篤は五所平之助「マダムと女房」では劇作家役。コミカルなお父さんを演じていたが、この映画ではいちばん真っ当な生活をしている賢人役だ。唯一ほっとできる登場人物といえるかもしれない。
名もなく貧しく美しく生きるのも人間なら、無意味に愚かに生きていくのも同じ人間だ。山本周五郎の視点をみごとなまでに映像化した作品だった。