2025年4月8日火曜日

相米慎二「ラブホテル」

20代の半ばでテレビコマーシャルの制作会社に潜りこんだ。ほんの駆け出しの頃、実相寺昭雄監督の仕事をすぐ傍で見せてもらったことがある。
ラッシュ編集を終え、制作進行の先輩が「監督、ナレーターはどうしましょうか」と訊く。監督は「ノウちゃんがいいんじゃないか」ということですぐに決まった。ノウちゃんとは俳優の寺田農。実相寺監督の映画にも何本か出演していたらしい(当時はそんなことすら知らなかった)。
ノウちゃんの語りは朴訥でアナウンサーみたいに喋るプロのナレーターとはまったく異なっていた。おそらくねらい通りだったのだろう、監督はその語りを2~3テイク重ねてOKを出した。
寺田農は本来不器用な俳優なのかもしれない。あるいは不器用を演じることができる稀有な人なのかもしれない。相米慎二監督のこの映画を観て、強く感じた。

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