2014年6月23日月曜日

黒澤明「どですかでん」

山本周五郎の『季節のない街』が原作。
この小説には『青べか物語』の浦安のように特定できる地域が見当たらない。
黒澤明はこの映画を南葛西あたりのロケ地と東宝のスタジオで撮ったという。公開が1970年、世界の国からこんにちはの年だから、すでに貧民窟も少なくなっていただろうし、登場人物の個性というか人間味を演出するには美術セットが必要だったにちがいない。
たんばさんの渡辺篤は五所平之助「マダムと女房」では劇作家役。コミカルなお父さんを演じていたが、この映画ではいちばん真っ当な生活をしている賢人役だ。唯一ほっとできる登場人物といえるかもしれない。
名もなく貧しく美しく生きるのも人間なら、無意味に愚かに生きていくのも同じ人間だ。山本周五郎の視点をみごとなまでに映像化した作品だった。

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