2019年9月24日火曜日

山田洋次「学校」


ロケ地は都電荒川線の小台か荒川遊園地あたりか。
京成電車の走る高架はおそらく町屋だ。
遠くに都電の踏切が見える商店街は梶原銀座に違いない。
再開発途上の南千住では遠くに隅田川貨物駅の建物が見えていた。
山田洋次の映画のなかでは「下町の太陽」「家族」が好きだ。
役者たちに力があって、演出を感じさせない。
この映画もそうだ。
西田敏行が大きな演技を抑えて、山田世界に溶け込んでいる。
すっかりなじんでいる。
夜間中学という設定自体にすでにテーマが見え隠れしているけれど、演出を超えたひとりひとりの演技に人々はきっと感動するのだろう。
田中邦衛、新屋英子、竹下景子。
誰もがみな素晴らしい。
映画そのものがいい学校だ。

2019年9月10日火曜日

ヴィンセント・ミネリ「巴里のアメリカ人」

ガーシュウィンの「パリのアメリカ人」は仕事をしながらよく聴く曲だ。
お恥ずかしいことにこれが映画の主題歌だったと知ったのはつい最近のこと。
どんな映画だったのかたしめてみることにした。
主演がジーン・ケリーだからおそらくミュージカル映画だろうとは思っていたが。
詳しいことは書かないけれどラストは圧倒される。
パリのアメリカ人の夢とエネルギーがファンタジックに描かれている。
「ラ・ラ・ランド」みたいな映画だった。
そうじゃない、この映画が「ラ・ラ・ランド」のベースになっているのだ。

2019年9月4日水曜日

内田けんじ「鍵泥棒のメソッド」

内田けんじの映画をはじめて観たのは十数年前、「運命じゃない人」というタイトルだった。
登場人物が微妙にかかわり合いながら、それぞれの視点でストーリーが構成されている。
目からウロコというか、当時その斬新な構造の映画に驚いた記憶がある。
今回観たこの映画も桜井、コンドウ、水島香苗のそれぞれの視点が気になる。
プロットと脚本がしっかりできている映画だと思った。

2019年9月3日火曜日

小森白「太平洋戦争 謎の戦艦陸奥」

吉村昭の小説に『陸奥爆沈』という作品がある。
昭和18年柱島に停泊中の戦艦陸奥が突然の爆発事故を起こし、あっという間に沈没した事件を題材にした記録文学である。
この映画もその事件を題材にしている。
外国人スパイによる犯行というかたちになっている。
真実ではないだろうが、実際謎に包まれたままなのであるから、もしかすると真実だったのかもしれない。
戦艦陸奥は模型が使われている。
1960年という時代を考えるとミニチュアによる撮影以外に方法はなかったのかもしれない。