2016年10月12日水曜日

豊田四郎「泣蟲小僧」

林芙美子の初期の作品である「泣蟲小僧」が映画化されていた。
昭和9年に発表され、13年に映画が公開されている。作者が世に広く知られるようになったことがうかがえる。
原作は少し間の抜けた少年が姉妹の間をたらい回しにされる話だが、フィルムを観る限り、しっかりしたいい子役だ。
その啓吉が赤の他人である尺八のおじさんの寄宿先でひと晩過ごした翌日、物干しの上で箱根の山を歌う。すぐそばの高架線を三両編成の電車が走っている。いい風景だ。
貧しさを明るく笑って生きていく林芙美子の世界はこんな昔からちゃんと描かれていたんだなと思う。

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