2018年12月30日日曜日

ロン・ハワード「アポロ13」


高校バレーボール部のM先輩は、もう何年も前に亡くなられている。
大手の広告会社のクリエイティブディレクターだったこともあり、OB会以外でもお会いしている(残念ながら仕事をごいっしょしたことはない)。
先輩のオフィスでばったり会うと「よう、ハンクス君」と声をかけてくださった。
僕がトム・ハンクスに似ているわけではない。
たまたま床屋に行った直後など、いつももさもさしている頭髪がすっきりしているとどことなくそう見えたのだろう。
大先輩から(M先輩は僕の14期も上にあたる)かけられたことばがうれしくて、トム・ハンクスの映画はよく観るようになった。
ひたすら走り続けたり、夢の列車の車掌になったり、見知らぬ土地の空港に閉じこめられたり。
ストーリーはさまざまだがつい誘いこまれてしまう。
この映画は実話がベースになっている。
とりあえずよかったなとほっとしている。

2018年12月24日月曜日

ジム・ジャームッシュ「ダウン・バイ・ロー」

「ストレンジャー・ザン・パラダイス」に続いて観たのがこの作品。
同じようにモノクロームだが、ストーリーが明快でわかりやすい(はちゃめちゃなコメディであることに変わりはないけれど)。
アメリカ南部、おそらくニューオーリンズの湿地帯と枯れ木の風景が印象的な映画だ。

2018年12月23日日曜日

エリア・カザン「エデンの東」

スタインベックの短編を読む英語の授業があった。
大学の一般教養だったと思う。
その後、翻訳でスタインベックを何冊か読んでいる。
長編小説で印象に残っているのが『怒りのぶどう』と『エデンの東』である。
エデンはたしかハヤカワ文庫で4冊にわかれていたと思う。
キャルが母親をさがして出会うのはかなり後半の方で、映画ではそのあたりが描かれている。
いかにもアメリカ的な色彩を持った映画だ。
全体のストーリーの記憶が曖昧なのでこんど本も読んでみよう、もう一度。

2018年12月22日土曜日

ジム・ジャームッシュ「ストレンジャー・ザン・パラダイス」

80年代、あまり映画を観なかったにもかかわらず、この映画は衝撃的だった。
全編モノクローム、娯楽大作が主流のアメリカからこんなに静かな映画がやってくるなんて思いもしなかったからだ。
まるで昔のフランス映画やイタリア映画と見まごうばかり(というかそんなに観ちゃいないんだけど)。
舞台はニューヨーク、クリーブランド、フロリダと移ってゆく。
短い黒みが挿入されるのが特徴的だ、昔の地下鉄銀座線みたいに。
ロードムービーというより、メトロムービーと言っていい。

2018年12月19日水曜日

山田洋次「続・男はつらいよ」

好評だった第一作に続いて1969年に公開された第二弾。
母親との再会、恩師の死、そして失恋。
前作にもまして、物語に起伏があり、メリハリがあって、おもしろい。
いい映画だった。
寅さんは泣いてばかりいた。
泣くといえば、渥美清は寅さんになる前に「泣いてたまるか」というドラマに出演していた。
まだ小さかったけれど、憶えている。
子どもにも泣けるドラマだった。

2018年12月17日月曜日

山田洋次「男はつらいよ」

フーテンの寅さんは26年間に48作制作された。
そのうちの何本かを映画館で、テレビで観た。
何作めを観たのか、思い出してもわからない。
映画になる前はテレビで放映されたという。
微妙に配役が違っている。
さくらは長山藍子でひろしは井川比佐志だったらしい。
ふと思い立って、一作めを観る。
イラストレーターの安西水丸が著書『東京美女散歩』のなかで「寅さんシリーズでは、この第一作目が一番好きだ。光本幸子がとても美しい」と書いている。
なんとなくわかる気がする。
このあと何作も続くとは想定されていなかったのではないかと思う。

2018年12月12日水曜日

ロン・ハワード「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK」

ザ・ビートルズとは何だったのか。
オンタイムでビートルズ登場の衝撃を受けた世代もある。
少し遅れて知った者たちもある。
ずっと後になってめぐりあった若者たちもいる。
気が付いたときにはすでに解散していたビートルズを、僕は草一本生えない砂漠に突如あらわれたゲームセンターみたいなものとイメージしている(なんとも貧困なイメージだ)。
ジョン・レノンの「僕たちはキリストより人気がある」という発言が物議をかもしたこともあるが、産業革命とビートルズは大英帝国が後世に遺した偉大な歴史である。
ユネスコ世界文化遺産に認定される日もそう遠くはないだろう。

2018年12月10日月曜日

石川淳一「ミックス。」

卓球映画といえば、曽利文彦監督の名作「ピンポン」が知られている。
松本大洋原作の漫画を映画化したものでどっぷり卓球に浸かっている。
この映画はラブストーリー。卓球は少し薄められている。
新垣結衣と瑛太だから映画としてのある程度の成功は約束されているものの、吉村真晴や伊藤美誠が出てきたり、水谷隼、石川佳純のおまけまで付いていて楽しい。
卓球に限らず、スポーツを題材にした映画は制作者にとっても出演者にとっても難易度が高い。
リアルに描ければ描けるほど観客を惹きつけるだろうから。
キャストたちはずいぶんがんばっている。
でもなんといっても蒼井優の存在がこの映画を引き締まったものにしている。

2018年12月9日日曜日

山田洋次「家族」

この映画を観たのは中学生の頃だ。
校外学習だったか、区の文化センターで上映された(うっすら記憶に残っている)。
長距離列車や夜汽車、大阪万博がまだ身近な時代だった。
出演者はきわめて少ない。
長崎西彼杵郡の島から北海道の中標津まで、ゲリラ的なロケーション撮影だったと知ったのはつい最近になってからだ。
地元の人たち(一般の方々)とのふれあいが描かれる。
リアリティがある。
そのなかに溶け込むような倍賞千恵子の演技がすばらしい。
1970年の上野駅周辺にはまだ都電が走っていた。

2018年12月6日木曜日

富野由悠季「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」

ガンダムのテレビシリーズにはORIGINもあれば、続編もあった。
1988年公開だから30年以上も前のことである。
ア・バオア・クーの激戦の後、みんなどうなったんだろうかと心配していたが、アムロもシャアも生きていた。ミライさんはブライトと結婚して子どももいた。
あとは知らない人ばかりだった。

2018年12月5日水曜日

安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅵ」

「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」もこの第6話で完結。このあとテレビシリーズにつながっていく。
つくられた時代に40年近い差がある。ORIGINシリーズは回を追うごとにモビルスーツの質感が高まってくる。3D感にあふれてくる。
昔のアニメーション感もいいが、このリアルなC.G.でテレビシリーズをもういちど制作したい思う関係者も多いのではないだろうか。
ガンダムには外伝など別ストーリーも多く、奥が深い。まるで宇宙のようである。

2018年12月4日火曜日

安彦良和「機動戦士ガンダム THE ORIGIN V」

Ⅳまで観ていた。
はやく続きが観たいものだと思っていた。
いよいよ連邦軍とジオンの戦争がはじまる。
シャアはすでに大人だが、ガルマはまだまだ幼い(テレビのシリーズになると急に大人びて恋なんかしちゃうのに)。
御曹子キャラクターに変わりはないが、ギレンもキシリアもドズルも人格形成されている。
いちばんの見どころはやっぱりガルマ様だ。

2018年11月21日水曜日

今村昌平「復讐するは我にあり」

緒形拳は、野村芳太郎監督「砂の器」の印象が強いせいか、あまり悪人に見えない。
「魚影の群れ」(相米慎二監督)で見せた頑固な漁師、「鬼畜」(野村芳太郎監督)における気弱な印刷屋など幅広い役をこなす名優であるには違いないが、強盗殺人鬼という設定には多少違和感をおぼえる。
先日『脇役本』(ちくま文庫)というおもしろい本を読んだ。
脇をかためる名優たちの残した本を紹介している。
殿山泰司、加藤嘉、清川虹子、北村和夫。
この映画もすばらしい脇役に支えられていた。

2018年11月8日木曜日

野村芳太郎「疑惑」

松本清張の作品は北陸がよく似合う。
事件は富山で起きた。
岩下志麻と桃井かおり。
彼女らは本当にそういうキャラクターの人であると思わせてしまうほど迫真の演技を見せてくれる。
そして全編に張りつめた空気を描くことに関しては野村芳太郎の右に出る者はいないだろう。

2018年11月6日火曜日

野村芳太郎「しなの川」

主演も主題歌も由美かおる。
おまけにヌードシーンもありで一見、アイドル映画かと思えるが、旅をする=移動する緊迫感や加藤嘉、浦部粂子ら名脇役を配するところなど随所に野村芳太郎らしさが際立つ。
徐々に謎解きされていく展開は単純であるけれど、十日町や長岡、伊豆、佐渡など挿入される風景が美しく、それだけでも満たされる映画だと思う。

2018年11月5日月曜日

大森研一「ポプラの秋」

湯本香樹実の原作『ポプラの秋』を読んだのは長女が小学生の頃だったか。
児童文学かと思っていたが、映画になってみるとずいぶん大人の作品なんだと思う。
あるいは大人の映画をめざしたのかもしれない。子どもの映画にもできただろう。
ポプラの葉がきらきら輝いていたり、枯葉のかさかさ鳴る音が心地い映画である。
カメラマンは中堀正夫さんだった。
世の中の映画がこんなにすがすがしいものばかりだったら、日本はもっと幸せな国になっていただろうと思う。

2018年10月8日月曜日

黒澤明「隠し砦の三悪人」

60年前の映画である。
黒澤作品はわずかしか観ていないが、ユーモアがあり、ちょっと真似したいアイデアがある(ように見える)。
後世の映画監督たちは穴が開くほど黒澤明を観たに違いない。
三船敏郎はいつも通り(決してうまい役者ではない)だが、脇がいい。

2018年9月28日金曜日

スタンリー・キューブリック「時計じかけのオレンジ」

映画をさほど多く観ていないせいもあるが、キューブリックの作品は「2001年宇宙の旅」くらいしか知らない。
この映画の原題はA Clockwork Orengeという。
「時計じかけのオレンジ」とは何とも興味をそそる邦題だと思っていた(そのわりには長いこと観ることはなかったが)。
キューブリックらしい奇抜な映画だった(らしいなどと言うほど観てはいないのだが)。
まばたきできない状況というのは側で観ていても辛かった。

2018年9月21日金曜日

遠藤尚太郎「築地ワンダーランド」

築地市場(東京都中央卸売市場)の豊洲移転まで秒読み段階に入った。
場内の飲食店は早朝から昼までどこも行列行列の大混雑である。
築地には築地独自のシステムがある。
江戸の昔から培ってきた商売のしくみが今も息づいている。
そしてその現場にカメラが入った。
たいへん貴重なドキュメンタリーである。

2018年9月20日木曜日

フィルダ・ロイド「マンマ・ミーア!」

結婚式を目前に控え、父親さがしをする娘。
舞台はギリシャ。エーゲ海に浮かぶ小島。圧倒的な風景とたたみかけるアバのヒット曲。
多少つまらない映画だったとしても許される要素はいくらでもあったのに、思いがけなくハッピーな結末。
いずれ名作と呼ばれる映画になるかも知れない。

2018年9月19日水曜日

上田慎一郎「カメラを止めるな!」

話題作をタイムリーに観ることはあまりない。
もっと観なくちゃと思う映画がたくさんあるからだ。
この映画は多くの人から注目されていたようだ。
遅ればせながら観た。
おもしろいとしか言いようがない。
舞台裏的なドラマは珍しくはないけれど、映像制作に携わる者たちの無益無駄無意味と思える努力の数々に哀愁すらおぼえる。
観てよかった。

2018年8月22日水曜日

細川徹「オケ老人!」

昨年明星学園で開催されたクリスマスコンサートで演奏を聴いたムジカ・プロムナード。その団員がエキストラとして出演しているという。
映画だから奇想天外なのは当たり前だが、音楽ものの映画は観ていて楽しい。
舞台になっている地方都市の風景ものどかでいい。
野々村ラヂオ商会のたたずまいは何とも言えない。

2018年8月6日月曜日

デミアン・チャゼル「ラ・ラ・ランド」

アメリカ製のオールドシネレンズで写真を撮るとなんてことない風景が思いのほか色鮮やかに写し出され驚くことがある。
オープニングはまさにアメリカ的色彩。この映画に対する期待が一気にふくらんでくる。
以前観たことがあるヒロインは、ウディ・アレン監督「マジックインムーンライト」のエマ・ストーンである。
ライアン・ゴズリングと彼女はそれぞれの道を歩む。ほろ苦くて、せつないラストではあるけれど、それぞれが幸せであることが何より救いだ。

2018年7月23日月曜日

瀬々敬久「64-ロクヨン-後編」

64の後編を観る。
そうだそうだ、こんな話だったと思い出す。
このあいだ「大いなる旅路」を観た。
佐藤浩市は三國連太郎の息子である。
父は鉄道員で息子は警察署の広報官だ。
息子は大間でまぐろを釣ってもいた。
こんなことはいくら言ってもきりがない、あくまで配役の話だ。
でも息子もいい役者だと思う。

2018年7月17日火曜日

小林達夫「合葬」

彰義隊のことを少しくわしく知ったのは吉村昭の長編小説による。
その後、杉浦日向子の『合葬』を読む。
この映画の原作である。
歴史の中の彰義隊ではなく、彰義隊の中にあったであろうドラマが語られている。
おそらく原作者の創作だろう。
けっして饒舌な物語ではない。
映画も寡黙である。
セリフの多寡ではなく、情景も心理描写も何もかもが寡黙である。
こういう映画はきらいじゃない。

2018年7月13日金曜日

瀬々敬久「64-ロクヨン-前編」

横山秀夫『64(ロクヨン)』を読んだのはたしか2年前。
ちょうど映画が公開された頃だった。
映画が話題になっていたので読んでみたのだろう。
原作を読んだら、映画も観てみようと思った。
あれから2年が過ぎてしまった。

2018年7月12日木曜日

舛田利雄「二百三高地」

日露戦争における旅順陥落に関しては乃木司令官以下日本陸軍の愚直な戦術がしばしば取り沙汰されている。
事実だったどうかも今となってはわからない。
3時間を超える映画で二百三高地を合理的に攻めはじめるまで2時間半近くを要する。
うず高くつまれた屍に乃木希典は思いを馳せる。
小賀中隊長の最期。詳細な描写は必要だったのかとも思うが、そうでもしなければあおい輝彦の気持ちは夏目雅子に伝わらなかったのかも知れない。
夏目雅子ってきれいだな。あらためて思う。

2018年7月11日水曜日

マルク・フィトゥシ「間奏曲はパリで」

ノルマンディで夫と畜産を営むブリジット(イザベル・ユペール)がある日夫に嘘をついて二泊三日でパリへ小旅行に出かける。
三日間は冒険でもあり、放浪でもある。
パリには行ったことがない。
ブリジットのように歩けばいいのかも知れない。恰好のパリ入門映画である。
パリを彷徨うおばさんのホールデン・コールフィールドみたいだ。
夫(ジャン=ピエール・ダルッサン)がこっそり後を追う。
失意のまま息子のアクロバットを観る。ここがいい。

2018年7月9日月曜日

関川秀雄「大いなる旅路」

新藤兼人が脚本を書いた東映映画である。
盛岡の機関士は三國連太郎。
不器用な男の生き様が武骨に描かれている。
大正末年からドラマがはじまる。
物資が乏しくなる。長男は招集される。三男は予科練に志願する。
暗い時代を機関車だけが走り続ける。
こういう映画を今観ることができる幸せを噛みしめたいと思う。

2018年3月5日月曜日

原田眞人「突入せよ!「あさま山荘事件」」

1972年。
講堂件体育館ではほうきをスティックに、輪投げの輪をパックにしたアイスホッケーごっこが流行っていた。
札幌オリンピックでにぎわっていたテレビが何週間も経たないうちに凄惨な事件現場を連日中継いていた。
連合赤軍という言葉の意味はよくわからなかった。犯人たちは名のある大学に通った若者が多いと聞いた。
もうすぐ中学生になる自分は恐怖と不安のまなざしでじっとテレビを視ていた。
大人になるのが怖かった頃のできごとである。

2018年2月13日火曜日

川島雄三「幕末太陽傳」

観たい観たいと思いながらなかなか観ることができなかった映画。
落語の居残り佐平次でおなじみのストーリー。江戸時代の末期には古典落語なんて言葉はなかったんだろうと思う。
落語では高杉晋作はたしか出てこなかったと思う。石原裕次郎がデビューするのは昭和になったからだしね。
佐平次の咳が気になる。無事に長生きしてほしいキャラクターだから。

2018年1月5日金曜日

スタンリー・キューブリック「2001年宇宙の旅」

何度も観ても素晴らしい映画だ。
人類がまだ月に降り立ってもいず、男子100メートルでようやく10秒を切った1968年の作品。
当時の映像制作技術に思いを馳せる。
コンピュータ・グラフィックス技術はあったかもしれないが、実用的なレベルであったかどうか。ひとつひとつの未来がことごとく手づくりされている。
今から半世紀前、想像力はクラフトワークでカタチになっていたことがわかる。
未知の宇宙の映像にR.シュトラウスをはじめとしたクラシックの名曲を響かせる。
いつまでたっても新しい稀有な映像作品である。

2018年1月4日木曜日

新海誠「君の名は」

年末年始はテレビでいい映画を観ることができる。
大晦日は朝からNHKBSで黒澤明監督の映画を立て続けに放映した。
正月の煮物をつくりながら観たかったけれど、片手間に観るような映画ではない。
元日もBSでは「合葬」「ジョーズ」「ニューシネマパラダイス」「タイタニック」と目白押しだった。
落ち着いてテレビで映画を観たのは3日に放映された「君の名は」である。地上波初放送とのことだった。
四谷の須賀神社の参道や信濃町駅前の歩道橋など見慣れた風景もアニメーションになると新鮮に見える。
背景が少しリアル過ぎるかと思ったけれど、それはそれでわるくない。